福岡地方裁判所 昭和47年(む)797号 決定 1972年7月15日
被告人 古閑正春
決 定
(被告人、申立人氏名、事件名略)
右被告事件について、福岡簡易裁判所裁判官が昭和四七年七月四日になした勾留取消請求却下の裁判に対し、同月一二日申立人から準抗告の申立があったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件準抗告の申立を棄却する。
理由
一、本件準抗告申立の趣旨および理由の要旨は、「被告人の公判廷への出頭を確保し得るや否やに関して、十分な調査をなすことなく、一方的に刑事訴訟法六〇条一項一号、三号所定の事由ありとして、本件勾留取消請求を却下した原裁判は、判断を誤つた違法なものであるから、原裁判を取消し、被告人の勾留を取消す裁判を求める」というにある。
二、所論に対する判断に先立ち、職権により調査するに、本件記録によれば、昭和四七年六月八日本件窃盗被告事件につき福岡簡易裁判所に公訴が提起されたところ、同年七月五日第一回公判期日が開かれて、すでに同期日において証拠調手続が行なわれていることが認められる。
してみると、勾留に関する処分は、第一回公判期日後においては、すべて当該被告事件の公判審理を行なう裁判所がこれをする権限を有するのであるから、時々刻々事情の変動する可能性の存する勾留に関する処分については、第一回公判期日が開かれた以上、申立人において、裁判所に対して、あらたに勾留に関する処分(本件においては勾留取消)を申立てることは格別、第一回公判期日前に裁判官のした処分(本件においては勾留取消却下)の取消変更を求めて、準抗告の申立をなすことはもはやできないものと解するのが相当である。
三、してみると、本件準抗告の申立は、結局のところ不適法であるに帰するから、申立の内容について判断するまでもなく、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項に従いこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。